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コーシー・ビネの公式

コーシー・ビネの公式は正方行列 \(A, B\) に対して $$\det(AB) = \det(A)\det(B)$$ が成り立つことの、\(A, B\) が正方行列と限らない場合への一般化です。ただし、\(\det\) は行列式とします。つまり、\(A, B\) をそれぞれ \(n \times m, m \times n\) 行列とすると、\(AB\) は \(n \times n\) の正方行列になり行列式が定義できますが、このときの上の公式に相当するものを得たいです。\(S\) を \(\{1, 2, \ldots, m\}\) の \(n\) 元部分集合、\(A_S\) を \(S\) の元で番号づけられた列を取り出した \(n \times n\) 行列、\(B^S\) を \(S\) の元で番号づけられた行を取り出した \(n \times n\) 行列とします。このとき、

コーシー・ビネの公式:$$\det(AB) = \sum_S \det(A_S)\det(B^S)$$ ただし、\(S\) は \(\{1, 2, \ldots, m\}\) の全ての \(n\) 元集合を渡る。

が成り立ちます。

証明:\(\Lambda\) を対角に不定元 \(x_1, x_2, \ldots, x_n\) が並ぶ対角行列とします。つまり、\begin{eqnarray}
\Lambda_{i, j}
=
\begin{cases}
x_i & ( i = j) \\
0 & ( \text{otherwise} )
\end{cases}
\end{eqnarray}とします。\(A\Lambda B\) の各成分は \(1\) 次同次多項式であるため、\(\det(A\Lambda B)\) は \(n\) 次同次多項式です。\(\det(A\Lambda B)\) の \(\prod_{i \in T, e_i > 0} x_i^{e_i}\) の係数は \(i \not\in T\) について、\(x_i = 0\) としても変化しません。このとき、ある不定元の次数が \(2\) 以上だと、\(\mathrm{rank}(A\Lambda B) \leq \mathrm{rank}(\Lambda) \leq n-1\) となってしまうため、\(\det(A\Lambda B)\) の係数は \(0\) であると分かります。以上より、\(x_1, x_2, \ldots, x_m\) のうち、\(n\) 個に \(1\) を、それ以外に \(0\) を代入して \(\det(A\Lambda B)\) を計算することを全ての場合について行って、和を取れば \(\det(AB)\) が得られます。

Published in データ構造

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