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最小全域有向木:Edmonds

Edmondsのアルゴリズムは、頂点数 \(N\)、辺数 \(M\) として、最小全域有向木を \(O(NM)\) で構築します。有向木とは下図のような、入次数高々1で閉路が存在しないグラフです。

各辺 \(c\) に重み \(c(e)\) が定まっているグラフ \(G\) の全域有向木であって、重みの和を最小化するものを、最小全域木と言います。
まず、Edmondsのアルゴリズムの準備として次の二つを示します。

各頂点の入次数高々 \(1\) で辺数最大のグラフのうち、重み最小のものは \(O(M)\) で求まる。以下では、このグラフを俗称として「最小有向なもり森」と呼ぶ。

下図のようなグラフです。

各頂点に入る辺で、重み最小のものを採用すれば良いです。

最小有向なもり森の閉路の辺を可能な限り含む、最小全域有向木を \(B\) とする。最小有向なもり森の各閉路 \(C\) について、驚くことに、\(B\) は1辺を除き、その閉路 \(C\) の辺を含む。つまり、\(|E(C) \setminus E(B)| = 1\) が成り立つ。

証明:\(n:=|E(C) \setminus E(B)| \geq 2\) と仮定して矛盾を導きます。有向閉路 \(C\) に沿って、\(B\) に採用されなかった辺を \((a_1,b_1),(a_2,b_2),\ldots,(a_n,b_n)\) とします。\(B\) で \(b_i\) に入る辺を \(f\) とします。\(f\) と \(e := (a_i, b_i) \) を交換しても、\(B\) の各頂点の入次数 1 のままです。\(c(e) < c(f)\) なので、\(e\) が採用されないためには、\(B-f+e\) に閉路ができなければなりません。つまり、\(B\) には \(b_i\)-\(a_i\) パスが存在します。入次数1より \(b_i\)-\(a_i\) パスと \(b_{i-1}\)-\(a_i\)パスとの最初の交点 \(v\) は \(b_{i-1}\) になります。つまり、\(b_{i}\)-\(b_{i-1}\) パスが存在します(\(b_{0}:=b_n\))。\(b_n\)-\(b_{n-1}\)パス、\(b_{n-1}\)-\(b_{n-2}\)パス、……、\(b_2\)-\(b_1\)パス、\(b_1\)-\(b_{n}\)パスをつなぐと、回路ができるので、\(B\) が有向木であることに矛盾。従って、\(n = 1\)。

Edmondsのアルゴリズム

Edmondsのアルゴリズムは \(O(NM)\) で最小有向全域木を構築します。最小有向なもり森の閉路は、一辺を除き、ある最小全域有向木 \(T\) に含まれました。最小全域有向木に含まれない閉路の辺を特定する必要があります。閉路 \(C\) に入る辺 \(e=(a, b)\) が採用されるなら、閉路の辺 \(f=(b, c) \in C(E)\) は、\(T\) の入次数1より不採用です。そこで、各閉路 \(C\) を縮約し、上記のような状況の全てのペア \((e, f)\) について \(c(e) \leftarrow c(e)-c(f)\) としたグラフを \(G’\) と置きます。\(G’\) の最小全域有向木 \(T’\) において、閉路の縮約を解き、\(T’\) が閉路に入る頂点で閉路を裂いたグラフは、\(G\) の最小有向全域木になっています。\(G’\) の辺数は \(G\) より1個以上少なくなるので、以上を繰り返すことで最小有向全域木が求まります。

  1. 最小有向なもり森を求める。閉路が存在するなら2に移る。閉路が存在せず、最小有向全域木が求まっているなら3に飛ぶ。閉路が存在せず、最小全域有向木でもないならば、最小全域有向木が存在しない。
  2. 各閉路を1点に縮約する。その際、閉路の各辺 \(f=(b,c)\) について、\(b\) に入る辺 \(e\) の重みを \(c(e) \leftarrow c(e)-c(f)\) とする。1に戻る。
  3. 1⇆2をバックトラックして、最小有向木に使われた辺を列挙する。

一回の1⇆2で辺が一つ以上減るから、1⇆2のループは \(N\) 回以下。最小なもり森は \(O(M)\) で求まるから、全体では \(O(NM)\) 。

フィボナッチヒープを使うと \(O(M+N\log(N))\) になるらしいです。

参考文献

組合せ最適化 by B. コルテ, J. フィーゲン

輪読でkeymoonさんが教えてくれました。

Published in データ構造

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